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アルミニウム製の電線について

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アルミニウム製の電線について

アルミニウム製の電線について


  アルミニウムを使った電線について。
  一般に電線には銅が使われていますが、アルミニウム製の電線も使われています。 とはいっても、一般家庭などで使われている電気製品や、屋内配線等で目にすることはめったにありません。

  接続にあたって、柔らかいことや、配線接続時に強固な絶縁性酸化膜を破壊することが必要となるなど、銅に比べて注意すべき点がいくつかあり使いにくい面もありますが、PSE 電気用品安全法において、アルミニウム電線の記述もありますので使用すること自体は可能です。 ーーー  最近は、これら留意すべき点を改善する技術も進んできているので、軽さやコストメリットを生かして徐々に活躍する場面も増えてくるかも知れません。 モーターの巻き線に使えば軽くできますし、特に車の電装に使えば車体の軽量化になり、燃費の改善にもつながると思われます。 参考までですが、一般の中型車の配線においては、1,000m~1,200mほどの電線が使われているそうですが、まだまだアルミの電線の占める割合は多くはありません。 

アルミが使われていると言っても、現状、“見える”場所には、ほぼありません。

  では、どこに? それは、送電線です。 高いところにあるので、見ても分かりにくいのですが、何百キロもの長距離において、私たちに電気を届けてくれている送電線です。
  架空送電線(鉄塔から鉄塔へと空中に設置された電線)においてはメリットがあり、多用されています。  
  架空送電線 : なんともぎこちない名称ですが、アンテナのことを日本語では、空中線と呼び、こちらもまた一般には聞き慣れない妙な単語ですね。

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銅製の電線と比べると、主だったところでは、

1) 銅よりも軽く(比重は1/3程度)、耐腐食性もある
2) 銅よりも安い(銅の1/3〜1/2程度)
3) 銅よりも導電性は劣る。(導電率は銅の約60%=電気抵抗が大きい)

  一長一短と言ったところですね。 導電性が劣ることで、送電ロスが大きくなるので、断面積を稼ぐために太くして対処する。 太くすると、重くなるけど、もともと比重が小さいので、ある程度相殺が可能。 太くすると、体積が増え、金属としての使用量が増えるが、単価が安いのでカバーできる。(とはいっても金属の価格は重さによるのであって、体積は直接的には関係ないですし、アルミはもともと比重が小さいので同じ重さであれば銅より体積は大きいです。) 太くすると、風当たりが強くなるので、台風などのときに不利になる。 などが考えられるのですが、 実際には次のように、トータルでメリットがあるそうです。

  電流容量を確保するために、電線サイズをワンサイズアップしても調達費用は安くなり、約30%軽量化もされることで、ケーブル費用削減、作業負荷低減による工期短縮/安定、作業安全の向上につながる。 また、風当たりについては、ディンプルを付けたゴルフボールの飛距離が伸びることからヒントを得た低風圧電線なるものの開発で、約30%もの風圧低減を実現し、既存の電柱等でも耐えられるようになり、 送電鉄塔も、電線の軽量化により建設コストが下がった。

  送電線と一口に言っても、大きな進歩を遂げてきたんですね。 たかが電線、されど電線ですね!

では、ここで恒例の脱線です。 クエスチョンを二つ。 答えは最後に記載してありますので、お楽しみください。

問題(Q1)
通常、送電線の電線は被覆がなく裸線ですが、その理由としては、人が触る恐れがなく、送電によって生じた熱が効率よく放熱され、被覆がないので(径を小さくできるので)風や積雪の影響を受けにくなり、軽量化やコストの削減も出来るということなどがあります。
 では、裸線なのにカラスなどの鳥がとまっても感電しないのは、なぜでしょうか?

問題(Q2)
この記事の最初のほうの送電鉄塔のイラストには描かれていませんが、実際には鉄塔のてっぺんにもう一本電線が張られています。(複数の場合もあります)
 さてそこには何ボルトの電気が流れているでしょうか? (電圧は何ボルトでしょうか?)


もう少しお付き合いください。トリビアをいくつか

・送電線の直径は4.6cmもあるものが、、、 重さは1mあたり約4kg、鉄塔間の距離を300mとした場合、1.2トン(一本の電線あたり)にもなるそうです。 こうなると線ではなく「棒」ですね。 電線から究極の金属バットが作れそうです。  とは言っても、本当は単線の直径で4.6cmというわけではなく、より線の仕上がり径なんですけどね。

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少し寄り道をします。 一本の直径が4.6cmもある送電線ですが鉄塔間をみると、だらーんとして、あまりピンと張ってないように見えるのですが、1.2トンという重さによるためで実はあれでも大変な張力がかかっているんです。 アルミは柔らかいので、その張力には耐えきれません。 そこで、実際の線の構成としては中心部分にステンレス(SUS)、まわりがアルミ(Al)の、いわばハイブリッド電線なんです。  耐張力にはSUS、送電にはAlと、それぞれ助け合って別の仕事をしているんですね。

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さらに寄り道をします。 ほぼ毎日のように多くの人がお世話になっている電車。 架線にパンタグラフが接触して電気をもらっているのですが、直接接触しているのは架線ではなく、正確にはトロリ線(トロリー線)といいます(トロリ線も架線の一部です)。 通常、硬い銅=硬銅が使われているそうですが、耐熱性や耐摩耗性をあげるため、銀や錫を配合していたり、張力アップには銅の中心に鋼(鉄鋼)の芯を入れてたりして強度を稼いでいます。 ちなみに太さとして通常は110sq(mm2)、新幹線用では170sq(mm2)ほどとのこと。
+α : トロリーバスというのを聞いたことがあるかもしれませんが、その名前はトロリ線由来です。

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さらにさらに寄り道をします。 トロリ線とパンタグラフとの摺動接触部分は摺板(すりいた)と呼ばれており、導電性が良くトロリ線を摩耗させにくいカーボンや銅合金などが使われています。
  さて、摺動と簡単に言いますが、朝夕のラッシュ時などには2-3分おきに電車が通過し、一編成の電車にはうろ覚えですが2機〜6機ほどのパンタグラフがついており、それが新幹線では約300km/h、在来線でも60~100km/h程度のスピードでこすっていきます。 アウトドアで木と木を摩擦させて火を起こすことができるぐらいなので、トロリ線もパンタグラフも、文字通り熱く身がすり減る思いを毎日しているのです。
  余談ですが、パンタグラフの数は電車の性能向上により、以前より少なくなってきているとのことです。 また、パンタグラフは、もともと原図をなぞることで、図などを拡大/縮小するための製図器具の名前でしたが、現在はもっぱら、「電車のパンタグラフ」という感じが強いです。

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ではどうしましょうか? ということで工夫がされています。 まず、トロリ線はまっすぐに張られているのではなく、ジグザグ(蛇行)になっています。 これは摺板の限られた箇所だけで摺動すると傷むのが早くなるので、左右に振って寿命を延ばすための工夫です。  今度、時間に余裕のある時にでもパンタグラフの上のほうも見てやってください。 また、摺板はトロリ線をできるだけ摩耗させることなく自分が摩耗することでトロリ線を守ります。  摺板は、車両の点検時等に容易に交換ができるよう取り外せるようになっていますが、トロリ線の交換となると、電気を止めて高いところの電線を張り替えて、高さを調節してと、考えただけで大変なのが分かります。

もとにもどりまして、
・発電所から、電気を使用する段階(家庭や会社など)に至るまでの送電の電力ロスは、現在の日本においては5%弱程度と言われていますが、1950年代においては約25%もロスしていたそうですから、かなりの改善がされてきていると言えます。 発展途上国では今でもロスが50%にも及ぶところがあるそうです。

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・日本で最も多い、石炭や石油などの燃料を燃やし電気を作っている火力発電所では、燃やした分のエネルギーを100%電気にできているわけではなく、60%程度のエネルギーはロスしているとのことです。 この数字は、送電線の太さだとか導電性だとかの範疇ではなく、とても非効率的であることが分かりますが、送電ロスの総量は、なんと原発7基分にもなるそうですから、火力発電の効率の低さに比べれば小さいものの、これもまたとても大きいものであることは否めません。(蛇足ですが、送電ロスは送電線の電気抵抗によるものだけではなく、変圧器や接続器などによるものもすべて含めて、発電した場所から消費する場所までのあらゆるものが関係しています。)

・送電線でのロスは、電線の電気抵抗に電流が流れることによって熱が発生し、ロスするわけですから、電流が大きければ大きいほど、ロスも大きくなります。 電流が2倍になれば、ロスは2倍になるのではなく、2の2乗で4倍になりますし、電流が3倍なら3の2乗で9倍にもになりますので、電流は極力小さいほうが経済的です。
   送電線を流れる電気は何十万ボルトといった高電圧なのですが、これは電圧を高くすることで電流を小さくして、ロスを減らすためのものだったんですね。
     蛇足ですが、電圧を100倍にすれば、計算上の電流は100分の1で済みます。 そのとき、ロスは100の2乗分の一、すなわち10,000分の一で済むわけですから、電圧を高くする効果は絶大ですね。

  冷たい風雪、風雨の中を耐え抜いている送電線のおかげで私たちは電気が使えているんですね。 送電線は、縁の下の力持ちならぬ、空中の力持ちでした。
今後は、送電ロスがほぼないといった意味からも、電気の地産地消が重要になってくるかもしれません。

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また、SDGsの観点から、再生可能エネルギーの重要性もさらに増してくるものと思われます。

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-------  節電にも協力したいですね  -------


このようにいろいろと見ていくと、好奇心のかたまりみたいな私にとっては興味深いことがたくさんあるのですが、長くなっているのでこの辺で打ち止めといたします。 話が右へ左へとフラフラしてしまいましたが、今回も最後まで読んでくださりありがとうございました。

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クエスチョンの答えです:

答え(A1) 一本の線にとまっているので、電流が流れないから。
二本の線にまたがってとまれば、閉回路が形成されて(電流が流れて)感電しますが、鳥の大きさからして、それは難しいですよね。  送電線上の鳥の巣が焦げたり燃えたりして、送電が止まる事故があるのは、二本の電線、または電線と鉄塔間にまたがって電流が流れてしまうことによるものです。 ちなみに電力会社の方々は、毎年鳥の巣の対策(見回りと除去)に大変な苦労を強いられておられるとのことです。

「電流が流れると感電する」ということ:
冬場に体に静電気が溜まっているときに、溜まっていること自体あまり実感が無くてもドアノブなどを触るとバシっと来ます。 これが電流が流れたことによる感電であると実感できます。 人は一万ボルトに帯電(電気を帯びていること)していてもあまり感じず、放電した際に初めて電撃を感じることぐらいで、帯電自体には鈍感です。 でも、帯電すると髪の毛が逆立ったりすることで、気が付くことはありますけどね。 ちなみに、テレビでの罰ゲームのビリビリは、少なくとも2,000~3,000Vぐらいはあるそうです。

猿二匹がそれぞれ異なる電線にぶら下がっていても感電はしませんが、たまたまお互いの手を繋いだとしたら、その瞬間に体の中を電流が走り、悲惨なことになります。 それぞれがぶら下がっているだけのときは回路が開いているので電流が流れませんが、手を繋ぐことで回路が閉じるため電流が流れて感電します。 猿を電線と考えればわかりやすいです。 電位の異なる電線と電線を触れさせれば電流が流れます--- 短絡(ショート)につながります。

答え(A2) 0V(ゼロボルト)
架空地線(かくうちせん)といい、接地されています。  読んで字のごとく「空に架けた地の線」ということで、地面との抵抗=接地抵抗を低減するための各種部材等を使用し先端が地面に埋め込まれています。 つまり、架空地線と地球はつながっており、地球を基準としてゼロボルトとなっています。

家庭の電器、例えば洗濯機やエアコンにはアース端子があり、アースを取るなどと表現しますが、まさに、地球に“接続”しているのです。 文字通りアース(地球)ですね。  あなたが今いる場所で地面に手を触れれば、かなり間接的ではありますが、あの何十万ボルトの送電線の上に張られた電線(架空地線)につながっていることになります。 別に危険なわけではありませんが、何か恐いような気もします?

架空地線は一般の道路わきにある電柱のてっぺんにも多く張られているので、時間に余裕のある時にでも見上げてみてください。 一番上に一本だけある線がそれです。(しつこいようですが、電圧はゼロボルトです)

で、架空地線を設置する目的ですが、直撃雷や誘導雷から架空送配電線を保護するためです。 お守り?  おまじない? ではありません。

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