1. サトーパーツ株式会社
  2. サトーパーツの部屋
  3. 続)初めて使うLED表示灯 --- 抵抗の計算

豆知識

続)初めて使うLED表示灯 --- 抵抗の計算

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
続)初めて使うLED表示灯  ---  抵抗の計算

今回は、やや数字が多くなるかもしれません

  前記事、『初めて使うLED表示灯』では、簡単な構造や使い方の説明をさせていただきました。 使用にあたって必要となる抵抗(抵抗器)は、Webサイトに“おすすめ”が掲載されていますが、今回は、実際に抵抗(抵抗値)を求めてみたいと思います。
 
やや数字が多くなるかもしれませんが、よろしくお付き合いください。

以下、【抵抗器】、【抵抗値】ともに、【抵抗】と省略して記載させていただきます。


※ 先に前記事『初めて使うLED表示灯』をご覧になるにはこちらをクリックください。

《抵抗計算の具体例》

この抵抗を求めます

この抵抗Rを求めます

   DB-1-F-CHR (本体色:クローム、レンズ色:赤)を、電源電圧10Vで使用するときの保護抵抗を求めてみましょう。
   商品ページ:
   https://www.satoparts.co.jp/products/search/DB/DB-1-F

    まずDB-1-F-CHRの仕様を確認します。  弊社のWebサイトですと、DB-1-Fの製品ページから、製品写真下の【LEDの定格および特性】をクリックします。 【最大定格および電気的・光学的特性】というが表示されますのでここから必要な数字を読み取ります。(下図)

DB-1 特性表


  表の中ほど右寄りの赤のラインで囲ったところに【順電圧VF(VF, Vf)】という項目があり、さらにその下に3つの項目があります。  ここでは使用するカラーがR(赤)ですので、一番上の背景がオレンジ色っぽく色付けされたところを見ます 。 【標準(V)】1.9、【最大(V)】2.3、【IF(mA)】10 と記載されていますね。

  この意味は、順電流IF(点灯させるときに流す電流)を10mA流した時に、順電圧VF(LEDの2端子間の電圧)は標準で1.9V、最大で2.3Vであるということです。
  VFについては、1.9Vが代表的な値で、バラついたとしても、2.3Vを超えることはありませんよという意味ですが、最小値については規定されておらず、どんなに小さくても良いことになります。 とは言っても、正常に出来ていれば、例えば0.5Vなどということはありえません。  LEDとして、そのような低い電圧のものは作れませんので。

  バラつきは、1.9Vの代表値に対して0.4Vと、約21%もありますので、「大きい!」と思えるかもしれませんが、明るさも含め半導体の製造上どうしてもバラつきは出てしまうので、そのことを受け入れたうえで使わねばなりません。  しかし、明るさに関しては、そのバラつき幅も大きく、明るさをある程度揃えたいなど使用上で問題となることもあるので、LED球の製造メーカーでは一個一個検査をして【ランク】付けを行って出荷しています。

  特性表に戻りますと、表の一番左に【推奨動作電流IF(mA)】10 と記されています。 今回の計算には、この10mAと、VFの2.3Vを使います。 ここでは、計算に1.9Vではなく、2.3Vを使いますが、その理由は特に低い電圧で使ったときに、もくろんだ電流が流れず暗かったり点灯しなかったりすることを避けるためです。使用電圧がVFに近ければ近いほど、そのようなことが起こりやすくなります。 ですので、多くの場合、1.9Vや概略値の2Vを用いて計算して問題ないと考えても良いかもしれません。

  さっそくこれらの数値を式に当てはめますと、

  保護抵抗(R)=(10 ー 2.3)÷0.01 = 770(Ω) となります。(蛇足:計算は基本単位で行いますから、10mA=0.01Aということで、10 → 0.01となりますよね!)

《抵抗での消費電力》

  これで、適切な抵抗が求められたのですが、ちょっと待ってください。  もう一つ大切なことがあります。  それは、抵抗で消費される【電力】です。  これを守らないと最悪の場合、発煙・発火に至る場合がありますので、とても重要です。

  電力Wは、電流の2乗と抵抗の積で求められますので、W=I2xR となります。  0.012x770=0.077W(ワット)となり、10分の1ワット=0.1W未満です。  ですので、抵抗は、それに耐えられるものを使用せねばなりません。  この程度の値であれば、ほぼどんな物でも使用できますが、同じ電流でも高い電圧で使ったり、もっと電流を大きくした場合には電力が大きくなりますので注意が必要となります。

《順電圧VFのイメージを再び》

  この記事の前に書かれていた『初めて使うLED表示灯』にて、電源電圧からVFを引く理由を立っている男の子の図でご説明いたしましたが、図は電源の電圧を抵抗(仮に男の子をあてています)とLED球のVFとで、分圧した形になっています。  つまり、電源の電圧を言わば抵抗とLED球とで分け合って“受持って”いたわけです。   今一度計算式を見てみましょう。(10 ー 2.3)は、とりもなおさず抵抗の“受持ち分”の電圧を求めていたわけです。  その電圧を抵抗で割れば、電流が求められますし、電流で割れば抵抗が求められるということになります。  おさらいになりますが、VFは使用電圧に影響されることなく何Vで使用しても変わりません

  前記事『初めて使うLED表示灯』で、VFと、それを差し引かなければならないイメージをイラストでご説明いたしましたが、今回、それよりも若干わかりやすい(?)ものにして、使用電圧が変わっても、VFは変わらないというイメージを作ってみましたので、以下をご参照ください。  えっ、やっぱりわかりにくい、、、ですか? 申し訳ありません。   筆者自身も、その出来に満足してはいないのですが(言い訳しときます)、筆者の表現力のプアさが露呈してしまったという結果になりましたね。  まだまだ修行が足りません 汗。

VFを引く説明図2

(ただし、VFが変わらないのは同じ電流を流して使用した場合であって、電流が変わると若干変わります。)


《抵抗(器) の調達を考えてみましょう》

  ここまでで、770Ω、0.1Wの電力消費が可能な抵抗であれば良いことが分かったので、具体的に抵抗を捜してみます。  部品販売店さんの店頭に行き、770Ωの抵抗をくださいと言っても、ほぼ100%「ありません」と言われます。   というのは、計算で出した値は、あくまでも計算値ですから、ありとあらゆる数字が出てくる可能性があります。  抵抗を、そのようなありとあらゆる値で作っていたらとんでもないことになります。  何千種類作ったところで到底すべてをカバーすることはできません。  現実的に無理です。

  ではどうするか? となりますが、一般的に抵抗としてコスト、性能(抵抗の種類、許容誤差等)のバランスが良く、かつ使用される頻度が高く市場に流通しているものにE-24系列というものがあります。  770Ωに近いものを捜しますと、 750Ωか 820Ωがあり、そのどちらかを選ぶことになります。  弊社のWebサイトでは、電流が抑えられる820Ωを選んで記してありますが、750Ωを選んでも使用可能です。  770Ωという数値は、10V、10mAという条件で算出されたものですが、750Ωや820Ωと採用した場合、実際はどのように変わるのかを見てみたいと思います。

《ここから少し細かい数字がでてきます》

  抵抗を求める式は、保護抵抗(R)=〔電源電圧(V) ー 順電圧(VF) 〕÷ 電流(A) でしたので、電流を求める形に変形しますと、 電流(A)=〔電源電圧(V) ー 順電圧(VF) 〕÷ 保護抵抗(R) となり、 750Ωのとき、電流(A)=〔10 ー 2.3〕÷ 750(Ω) = 0.0102666、、、(A)で、約10.27mA 、 820Ωのとき、電流(A)=〔10 ー 2.3〕÷ 820(Ω) = 0.0093902、、、(A)で、約 9.40mAとなり、 約0.00087(A)の差、つまり、 電流の差は約0.87mAとなりました。   この差をどう考えるかだけのことですが、通常はどちらでも問題はないと思われます。   また、消費電力は、それぞれ、0.079W、0.072Wとなり、市販の抵抗の規格でいけば、ともにWebサイトに掲載の1/8W(=0.125W)で問題ないことが分かります。  もちろん、1/4Wや1/2Wなど大きめのものであれば余裕が大きくなり、より良い方向となりますが形は大きくなる傾向にありますし、多数使用する場合は若干コストにも影響が出てくることもあるでしょう。

  このように、計算では、きっちりとした数字が出てきますが、実際の「物」では、そうはいきません。  電源電圧も、定電圧源からの供給でもなければ変動しますし、上の抵抗の計算により選択した抵抗もその値には「誤差」といった公称値(規格上の値:呼び)からの規格上許容される「幅」があります。  ここで選択したE-24系列の抵抗については、±5%の範囲が規定されています。   実際に5%はどのくらいになるのかを見てみましょう。
  ごく単純に計算してみますと。 750Ωの場合:750x0.95=712.5Ω 750x1.05=787.5Ω  820Ωの場合:820x0.95=779.0Ω 820x1.05=861.0Ω となることがわかります。  よく見ると、750Ωと820Ωとで、抵抗が重なっていて同じ値であり得ることがわかります。  例えば、目の前に一本の抵抗があって、その抵抗を測定したところ、780Ωであったとすると、その抵抗の公称値は750Ωと820Ωのどちらであるかはわからないということです。  もちろん、現物には表示がありますのでそれによれば特定できます。   抵抗の値が重なっていて、数字の上ではどちらにも属さないということがないような設定になっていて、切れ目(抜けている範囲)がありません。

  身近なところでは、キッズの衣服でサイズ記号100の適用胸囲が49-55(cm)、110が53-59(cm)、120が57-63(cm)などと寸法がオーバーラップしているのと似ているかもしれませんね。

値が重なることをTシャツで説明

上のイラストは、Tシャツでのサイズ表示と実際のサイズの幅(範囲)を表したものですが、抵抗で同様なことを考えてみると以下のようになります。

E-24resister_5percent_誤差説明.png

範囲がしっかりと重なっているのがわかると思います。(実は、例外もあるにはあるのですが、、、、、)

《さいごに》

  以上のように、電流に関しては複数の要素が絡んできますが、電源電圧から差し引くとしていたVFもその要素の一つとなります。  VFのバラつき幅はさほど大きくないのですが、場合によってはそれが大きく影響することもあります。  それは、電源電圧が低ければ低いほど計算上の電流値に与える影響は大きくなります。  その理由は、もうお分かりとは思いますが、(電源電圧)ー(VF)の式を見れば一目瞭然ですね。  (蛇足かも)VFが1.9V~2.3Vとしたとき、電源電圧が5Vのときと、20Vの時の計算結果を見てみると、5Vのとき3.1V~2.7V(幅0.4V)で、3.1Vに対して約12.9%、20Vのときは18.1V~17.7V(幅0.4V)で、18.1Vに対しては約2.2%となりますので、単純にパーセンテージの比較では、約5.9倍もの影響があることになります。  10%を軽く超えるとなると、抵抗の5%誤差のはるか上を行ってしまっていますね。   (なお、VFの値は、LED自体の生産上のバラつきや、流す電流、温度などによって変わることが知られています。)

  今回も最後までお読みくださりありがとうございました。


※ 前記事『初めて使うLED表示灯』をご覧になるにはこちらをクリックください。
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

お客様相談窓口

0120-70-7215

対応時間:当社営業日の 9時~17時