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豆知識

ねじのお話 --- その3

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ねじのお話 --- その3

ねじのお話(3/3)

 
  3回にわたって、「ねじのお話」をさせていただくうちの、今回は3回目、最終回です。


トルクと軸力のおはなし


 さて、話も終盤にかかってきました。 内容的には少しややこしい(やや、ややこしい)のですが、興味深い?内容ですので、今少しお時間をいただきたいと思います。

トルクの説明イラスト

トルクのイメージ

  一般的なお話ですが、ねじを締めるときに回す力を「締付トルク」といい、弊社の端子台などの仕様書においてM3ねじの場合、「端子ねじ締付トルク 0.5N・m」などと表現しています。 単位の意味はごく簡単に言えば、ねじの中心から1m離れたところまで棒を伸ばし、その棒の先に 0.5Nの力を加えて、回転力とするといったものです。 分かりずらいですが、イメージ的には、ボルトをモンキーレンチなどで回すシーンを思い浮かべて、左のイラストをご覧ください。

 この場合の「力」は、ねじの芯を中心とした円弧状の軌道を描くもので、単純に「棒」を押すだけの直線的な力ではなく、常に「棒」に対して直角(90度)方向の力になります。 

軸力というのは、あるトルクでねじを締付けたときにねじの軸方向(回転方向ではなく前後方向)にどれくらいの力が発生しているかということです。 これを端子台に当てはめると、実際にどれくらいの力で、電線なり圧着端子なりを端子金具に押し付けて接続(接触)しているかということになります。 本来、この軸力が重要なはずですが、締付けと言えば必ずというぐらい、トルクが登場してきます。 なぜでしょうか?

 それは、現場などで扱う際に、簡単で便利だからです。 トルクドライバー、トルクレンチなど、トルクを管理しながら締付けていく道具が発達しているので、簡単確実かつローコストに扱えるのです。 それに対して、軸力を直接管理することは困難かつ作業性やコストを考えると現実的ではないのです。 そういったわけで、一般に、軸力と相関関係のあるトルクで管理しています。


 トルクと軸力は、その係数は別として大まかには比例関係にあり、トルクを管理することで軸力を間接的に管理できるのです。 とはいうものの、じつは、意外と面倒なファクターも存在します。 それは、取りも直さず摩擦力(摩擦係数)です。 トルクをかけて回した時にそれがそのまま軸力に変換されるかと言えば、そうならないというか、素直にはそうならないというか、、、なんです。 回した際にそれが軸力となるために「力の方向」が変換されます。 それはねじの山によって行われます。 ねじ山での摩擦がゼロであれば諸手をあげて万々歳なのですが、素材や表面の状態によって、結構な差があるんです。 いま、スイスイとスムーズに回るねじと、錆びによって表面がザラザラであるようなねじを回したとします。 良く回るねじは、効率よく軸力に変わっていくであろうことが想像できます。 極端な例で考えると分かりやすいのですが、さび付いていてトルクをかけても全く回らないようであれば、ねじは進まず、軸力に変換されるどころか、回っていないのですから何もしていないのと同じで、軸力が生まれるはずもないと容易に想像がつきます。 

 これは、極端な例ですが、多かれ少なかれ摩擦が悪さをする可能性が大であることはお分かりいただけたと思います。 「じゃあ、トルクを管理したって意味がないじゃないか」と言いたくなってきそうですが、上の例はごく極端な場合であって、管理されたものであれば、実用上問題ないと言えます。 いま、摩擦が悪いように言ってしまったのですが、悪くはないんです。 なぜなら、摩擦が無ければ、ねじ自体成り立たないからです。 おねじの山とめねじとの間で摩擦があるからこそ緩まずにいてくれるわけです。 (余談 : ねじを知らない人から「おねじ」について、「なんで、ねじに「お」を付けて丁寧に言うの?」と聞かれたことがあります。 その「お」は「オス」の「お」ですと言ったら、「なーんだ、そうか」と言われました。 丁寧に言うから「お」が付いているのであれば、「めねじ」の「め」は、ちょっと説明が難しくなりますね。)
摩擦が無ければ、ねじは簡単に緩んでしまいます。

 それでは、【実際のねじ締付けにおいて、軸力はどのくらいあるのか】が知りたくなってきます。 その計算法は、筆者のように中学生時代、数学が不得手で常に赤点を取っていた(ウソです、一回だけです!)者にとってはとても難しいことですので、扉は叩かないことにします。

 代わりにといってはなんですが、ネット上で見つけた数字を紹介させていただきます。 数字の変更や単位の変換等を行っていますので、もしその過程でミスしていた時は、前述のように数学に関してはダメ人間ですのでご容赦を。

 それによりますと、 M3ねじをトルク0.5N・m(約5.1kgf・cm)で締め付けたときの軸力は、な、なんと1000N(約100kgf)以上にもなるそうです。 普段何気なく電線を締付けていますが、いわば電線に100kgの重しを乗せたような状態になっているとは思いもしませんでした。 小さなトルクで大きな軸力を生み出せることは、万力(まんりき=小さな力が万の力になるから万力)を思い浮かべていただくと分かりやすいかと思います。 しかし、こんな強い力で押し付けられたら、アルミの電線からは悲鳴が聞こえてきそうですね!

  

植物にも「ねじ」があるんです


 ずっと無機的なねじのお話をしてきましたが、命のある花の話を少しだけ。(長時間モニター画面を見ていて疲れた目も少し休めてあげましょう。)

ネジバナもどき

これが、ネジバナだって?

 名前は、捩花(ねじばな/ネジバナ)、「ネジレバナ」、「ネジリバナ」、「もじずり(綟摺)」などの別名もあります。

 蘭(らん)の仲間で、その名の通り、複数の花がねじれて咲きます。 一つ一つの花は小さく控えめですが、一つに注目し、よく見ると清楚かつ上品でとてもきれいな花です。 日本全国に自生していますが、小さいのであまり目立たず、《花の綺麗な雑草》扱いされるほどですが、ごく一部の園芸店やネット通販などでは商品として販売されています。 筆者は、背の低い草地や、公園の芝生や大きな河川の土手などに群生しているのを見たことがありますが、タンポポほどどこでも見られるといったものではありません。 あるところには結構たくさんあり、無いところには全くないというような生え方をしています。
下の写真のように、ねじ山にも似てねじれて咲きますが、左巻き、右巻きともにあり、巻き方は決まっていないようです。 中にはねじれずにまっすぐ育ったものや、途中からねじれ始めたものなど個性豊かでいろいろとあります。 何がきっかけでそうなったのかは本人?に聞いてみないと分かりませんが、生育途中の心に何か変化でもあったのでしょうか?、、、、、

ねじばな_twin

これが本当のネジバナ

 どうです? 初めてご覧になった方、変っているでしょう? ちょっと珍しい花です。 育った環境にもよりますが、ひとつ一つの花は、大きくても10mm程度で、うっかりすると花に見えないほどですが、よーく見ると美しいです。 ちなみに、白花が咲くものもあり、西洋種は日本のものに比べると大きいようです。 なお、ねじれてると言っても、「つる」ではないので朝顔のように何かに巻き付くといったことはありません。 
 どうでも良い筆者の好み : 生花店に並ぶ華やかな園芸品種も好きですが、こういった野に咲く控えめな花も好きです。 よーく見ると「小さな発見」があり、「ミクロな宇宙」が見えるからです。

ねじのエピソードあれこれ

 ・ねじをビスと呼ぶことがありますが、それはフランス語です。

 ・ねじの日の記念日は、6月1日。 ねじの「ね」が6、「じ」が1などということではなく、
  1949年6月1日に旧)日本工業規格(JIS)の基本法である「工業標準化法」が
  公布されたことにちなんで日付が決まっています。(別の説あり)
  1951年に、一般社団法人 日本ねじ工業協会が、制定した記念日だそうです。

 ・ねじは文字では次のようにいろいろとあります。ネジ/螺子/捻子/捩子/螺旋/ねじ。
  ちなみに、JISにおける”ネジ”は『ねじ』が正式な呼称となっており、この記事においても「ねじ」と記させていただきました。

 ・螺子の「螺」が入っている、「法螺吹き(ほらふき)」は、法螺貝(ほらがい)から来ているそうです。
  そう、あの山伏(やまぶし:山岳で修行する修験道の指導者)が吹くのが法螺貝で、これを山で吹くのは野獣を追い払うとともに魔を避けるためとのことです。
  だからといって、お若い方、都会に潜む魔物や野獣を避けようとして、繁華街で吹くのはやめたほうが無難と思います。 もしかすると、近くにいる人がみんな遠ざかっていくかもしれませんし、時と場合によっては、あなた自身が「魔物」に見られるかも知れませんから。
  それでも吹きたいというときは山伏に倣い、白装束に身を包んでコスプレ状態にしたほうがかっこいいかも知れませんね。(そんな奴おらんやろ!) 


  さて、ここでラストクエスチョンです。(答えは最後にあります。)   

Q3_toraプラカード 螺子(ねじ、らし)の他に漢字「螺」のつくものには、「田螺」や「栄螺」といったものがありますが、なんと読むでしょうか?
 余談ですが、ばねは、「発条」と書きます。
 

 以下、3問のクエスチョンのアンサーです(A1、A2は、「ねじのお話」の2回目におけるクエスチョンの答えです)

A1_toraプラカード
 それはねじの頭に目印としてISOねじにだけ「点」を付けることでした。それにより判別は容易にできましたが、それでも、間違えて使って、ねじを壊してしまったといったことが当時は多発。 締め始めはスムーズでも、ピッチが異なることで急に固くなり食いつくという現象が起こりました。


 さすがに最近であれば、旧JISのねじはほぼ見かけないし、機器等を新規に作る場合はISOねじを使うので、事故はほぼ無いとは思われます。 なお、今でも旧JISねじを取り扱っておられるねじの専門業者さんはいくつか存在します。
 また、現在のように間違えるということがないような状況下になっても、継続して「点」が付いた物が生産されています。 ちなみに当時のJISには「点を付けること」が規定されていましたが、現在のJISにおいてはその規定は削除になっていますので、必ずしも付ける必要はなくなっていますが、弊社においてもそのまま「点」付きのねじを使用しています。
 実は、最初のほうで出てきたねじの写真にも、その「点」が写っておりましたし、イラストにも描かれていました。


A2_toraプラカード 松とリンゴといえば、、、  松はPine、リンゴはApple、合わせて Pineapple
そう、パイナップルが正解でした。

A3_toraプラカード 「田螺」はタニシと読み、「栄螺」はサザエと読みます。
 以前は、田圃(田んぼ、たんぼ)に行けばたくさんのタニシを見ることができましたが、今はどうなのでしょう?

 多くの人は、田圃自体あまりなじみがないかもしれませんが、もし、見る機会があったら、
あめんぼや、ゲンゴロウ、カエルなどもお子さんと一緒に捜してみてください。
いまは、農薬の使用量も少なくなり、田圃に生息する生き物にとっては、環境が良くなったと言えるかも知れません。
ちなみに「螺」とは、貝殻が渦巻き状をしている貝類。 巻き貝。 のことを表すそうです。 
で、田螺は田圃にいる巻貝ということになりますね。

 筆者が幼少時に(流れ者として?)一時的に住んでいた、某県の家の周りには田圃がたくさんあり、夜になるとカエルが元気よく鳴いていました。 近所に住んでいた農家のおばあちゃんが、田螺の味噌煮付けを好んで食べていたのをかすかに覚えています。
 そういえば、ザリガニを茹でて食べていたのも思い出しました。(いったい、いつ?何処?のことだよ!--- 影の声)
 その家に遊びに行っていた、その類の食べ物未経験者の筆者は、「遠慮しないで食べな」と勧められるも、その時は子供なので夜な夜な包丁を研いでいる老婆の「怪談」を思い出して恐くなり、どちらにも手を出せずに何も言わずじりじりと後退してうちに走って帰った過去のエピソードもあります。(子供とはいえ、おばあちゃんには大変失礼なことをしました。)
 言うまでもなく、その家の子はザリガニをバリバリとかじってました。 大人になってから知りました、、、 ザリガニは結構美味しくて、高級料理として出されていると。
 美味しいものをよくご存じの中国は言うまでもなく、アメリカ、スウェーデン、フィンランド、ノルウェー、さらにはフレンチとしても。 日本でも一部のレストランで出されています。 よくよく考えてみれば「えび」の仲間ですから、美味くて当たり前かも知れません!


blog_pine01.jpg

 ・虫偏(むしへん)漢字 についての疑問


 さあて、漢字に触れた勢いで、また大きく脱線します。
 貝なのに、「螺」と、虫偏が付いています。 なんで、虫?

 そこで、虫偏の漢字について少し調べてみました。 とてもたくさんの文字がありますが、たとえば、
 → 蚊(か)、蜂(はち)、虻(あぶ)、蛹(さなぎ)、蛾(が)、蝉(せみ)、蝗(いなご)、蝶(ちょう)、蝿(はえ)、蟻(あり)など、容易に「虫、昆虫」と分かるようなものから、
 → 蝦/蛯(えび)、蛸(たこ)、蜆(しじみ)、蜊(あさり)、蛤(はまぐり)のように寿司ネタもあり、
 → 蛇(へび)、蝮(まむし)、蛙(かえる)のように、爬虫類や両生類まででてきます。
これらは、昔の話になりますが、「鳥」は鳥、「魚」は魚、それ以外の小さい生物は全て虫に分類されていたことからこのようになったそうです。

 では、クジラは? クジラは「鯨」と書きます。 たしか哺乳類だったはずなのに、「魚」偏です。 この場合はとても単純で、今ではクジラは哺乳類に分類されていますが、昔は魚だと思われ魚類に分類されていたためにこうなっているとのことです。

ヘビが虫の字に

ヘビから虫の字ができた?

も一つおまけに、虹は生物でもないのに虫偏がついています。  「虹 生い立ち」で検索すると最初のほうに、NiziU(ニジュー)が出てきましたが、確かNizi Projectでしたのである意味正解ですね。 それを飛ばしましてその生い立ちは? というと、竜になる大蛇が空を貫いて出来たのが「にじ」と考えられていた古代中国に由来しているそうです。 日本においても、古くから虹はヘビが息を吹いたものといった考え方もあったようです。 日本では、虹を見ると嬉しかったり幸せな気分になったりしますが、古代の中国人にとっては、虹は不吉なものの象徴で、虹が出ると良くないことが起こると信じられていたとも。

 さて、虹の漢字を分解しますと、「虫」は、もともと昆虫のような虫ではなく、ヘビの形に由来する象形文字で、それに「貫く」ことの意味がある「工」を組み合わせて「虹」となったそうです。 ちなみに、「工」は、指事文字といい、象形文字が形から出来たのに対して、形にしにくいことを点や線を組み合わせて表した文字です。(辞書によっては象形文字-指事文字の間で逆の分類がされていることもありますので、「一例」としてとらえてみるのも良いかも知れません。意味等についても諸説あるので、けっこう奥が深いようです。「工」に関しても、神事に用いる呪具に由来するとか、工作にかかわる道具を形どった象形文字であるとか書かれています。)

 漢字について筆者も今回初めて知ったことですが、漢字の成り立ち・構造によって分類すると大きく分けて4種類になるそうですので、脱線ついでに簡単にご紹介させていただきます。

・象形文字:物の形をかたどって文字を作る
・指事文字:抽象的な事柄を線や点などの記号の関係性によって表す
・会意文字:既存の二つ以上の文字を組み合わせ、それらの字の意味を合成して新しい意味を表す
・形声文字:「意味を表す字」と「音を表す字」を組み合わせて新しい字を作る

 「峠」(とうげ)という文字などは、会意文字の感じがとても良く出ていますね。山を上って行って、下りにかかるところが、峠。そのまんまですね。 ちなみに日本で作られたとされている文字です。 えーっと、小さな峠は小峠と言うのでしょうか?

 似ている文字では、裃(かみしも)などがありますが、江戸時代、武家の衣服で基本的に共布で上下が対(つい)になった衣服をいうそうです。衣偏に上下、これまたそのまんまです。

 漢字が出来たのは、かなり昔のことなので分からないことも多く、諸説あったり、不明なことがあったり、想像・推測の域を出ないものもあったりですので、どんな人たちがどのような考えで作って来たのか、きっと、こうだったのかもしれないなどと自分なりに妄想してみるのも面白いかも知れませんね。


今回は以上です。

「ねじのお話」、3回にわたってお届けいたしました(最終回)。ねじに関係のない話も多かったのですが、いかがでしたでしょうか?

そんなこと知っているよ! という内容も多かったとは思いますが、もし皆様のねじへの理解が少しでも深まったなら幸いです。 また別の記事もよろしくお願いいたします。

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