2極を並列に接続したら電流は2倍に? (後編)

本記事は、2極を並列に接続したら電流は2倍に?(前編) こちら
に続く内容ですので、そちらを先にお読みください
ちょっと道草・・・3極をを並列に接続したら電流はどうなるのでしょう?

3極並列
2極を並列にした場合はわかりましたが、3極を並列(3並列)にしたら、どんなことになる、、、、、のでしょうか?
左図のように、電路として3通りがあり、その3つのルートに分かれて流れることになりますが、2極から3極になったことでどのようになるのでしょうか?
実回路で考えてみましょう

3極並列回路
感覚的には左図のように接点(図では抵抗)が3つ並列になった場合です。 前々項の「仲良くないのはどんな時?」の図【電源と抵抗の単純な回路】で、右側にさらにもう一つ加わった形となります。 2極並列を基本において、右端に2Ω(1A)を一つ付けたのみで、全体の電流も1A増えて合計4Aとなりました。
さて、3極を並列にしたのですから、3倍の30A流せたらうれしいのですが、どうもそれは「とらぬ狸の皮算用」になりそうですし、2極の時よりも倍率的に厳しくなる予感がします。 2極並列では2倍は流せず、目安1.5倍だったので3極並列の場合も少なくとも3倍にはならないし、さらに、、、のではないか、、、という予想ができます。
「何とかの法則」みたいなものはありますが、それは置いておいて、ごくごく単純に考えてみましょう。
図において、1Ωに流れる電流は2A、2Ωのところはそれぞれ1Aとなります。 これを「比」にすると、2:1:1となります。(これは、前記事2極を並列に接続したら電流は2倍に?(前編)で出てきていた、抵抗値の逆比です)
少し無理があるかもしれませんが、この1Ω、2Ωの抵抗部を接点と考えれば、接点に流れる電流が2:1:1となるわけですね。 そして、この接点に流せる電流が10Aでしたので、各接点とも最大10A流せるのなら、2:1:1の「2」のところを10とすれば、10:5:5となるはずです。 そしてそれがそのまま答えと考えれば、10A+5A+5A=20Aとなりますから、3極並列に接続した場合は、2倍の電流(=20A)まで対応できると考えることができます。
以上をまとめますと、
2極並列とした場合は、電流容量は、1.5倍 (20Aに対しては75%)
3極並列とした場合は、電流容量は、2倍 (30Aに対しては約67%)
となるであろうことがわかりました。
ただし現実にありうる値として、
設定した条件 : 接点(接触部)の一つが5mΩ、それ以外が10mΩとしたとき → (1:2)
となります。
では、通電中に回路をON-OFFすると、、、

えっ、通電中にON-OFF?
さてさて、冒頭に記してあるように、以上のことは、継続して通電する場合のことであって、通電中に回路をON-OFFする場合はどうでしょうか。
スイッチでは、電灯などをON-OFFする場合、コネクタであれば通電中に抜き差しする場合、端子であれば通電中に電線を外すことが、これにあたります。 でも電線を外すのは危険極まりないですね。 相当の勇気と覚悟が必要になるかもしれません。 チャレンジ精神や、釣ってきたフグを自分でさばいて食べてしまうなどの無鉄砲さがあればいけるかも、、、もちろんおすすめはできませんが、、、、、そういえば、鉄砲にはいろんな意味がありますが、フグの俗称も鉄砲でしたね。
動作のタイミングによって、状況が大きく異なってきます

動作のタイミングで、、、
抵抗を並列にしたときと、接点を並列にしたときとは、ON → OFFや OFF → ONを行う場合においてはとっても大きな差があります。
というのは、スイッチであれば、二つの接点が全く同じタイミングで動作することは稀で、ほとんどの場合、僅かながらも時間差をもって動作しますので、接触抵抗がどうのこうのというだけの考え方は通じません。 「10A+10A=20A」の場合であれば、スイッチOFF → ON時は、先に動作した接点に2倍の「20A」、スイッチON → OFF時は、後から動作した接点に2倍の「20A」の負担がかかり、10Aのスイッチを2倍の20Aで使ったかのような状況になります。 その結果、接点とその近傍の温度上昇、接点の溶着や消耗、寿命の短縮、さらには、絶縁性・耐電圧性の低下などの問題が生じる可能性があります。
ということで、スイッチについては、2極を並列に接続して電流容量を増やすということはまったくもって適切ではないものと考えられます。 しかし、微少な電圧・電流で使う場合、2極を並列にして使用することで接触信頼性を向上させる意味においては有効と考えることができます。 実際に、スイッチやリレーなどであらかじめ接点を二つ持っている「ツイン接点」タイプも市販されています。
また、コネクタの場合も、通電状態で抜き差しした場合は、同様のことが懸念されますが、スイッチが固有のメカニズムでほぼ一定のスピードで動作するのに対し、コネクタの類は人の手によりそのスピードが遅いこともあり、極端な場合アーク溶接にも似た状況になることでコンタクト部が溶解し、溶着してしまうこともあり得ますので、特に注意が必要です。 通電状態での抜き差しは行わないのが賢明です。
【さいごに】
実際には、定格10Aのものに目いっぱいの10Aを流すことは通常あまりしません。 上のお話では、話を単純にするため、ディレーティングについては考慮せずに話を進めていますが、ディレーティングした場合にあっても、電流の上限値を低くとるだけのこと(例:10A→7A)であって考え方としては同様となります。 ここで取り上げた要素以外にも要因はいろいろとありますので、すべての場合において同じというわけにはいきませんが、一つの考え方として参考にはなるものと思います。
この記事を読んでくださっている皆様には、それぞれの考え方がおありのことと察します。 あらためて考えてみるきっかけになるならば光栄です。
【ディレーティングについて少しだけ、、、】
ディレーティングとは、平たくごく短く簡単に言い表せば、‘‘用途により電流などを調整し余裕をもって使うことにより、信頼性を上げること’’と言えるかもしれません。----- 簡単に言いすぎ?とも思いますが、たとえば最大10Aのところ、7Aで使えば30%のディレーティングということになりますね。(電流は、複数あるディレーティングのうちのひとつです) そのメリットは、電流容量に対して余裕をもって使うことで、発熱が抑えられたり、その熱による周囲への影響を軽減出来たり、温度が低くなることで自身の劣化を抑えられたりして、寿命が延びるなどがあります。 たとえば、使用周囲環境・条件が厳しく、長年にわたり使用されることが予想される機器などに適用すれば相応の効果が期待できると考えられます。
たとえば、宇宙を飛ぶような機器に汎用品を使用するときなどは、容易に交換や修理をすることもできないしその機器の寿命に対して余裕を持たせるために、かなり厳しいディレーティングを行っているといいます。 JAXA(宇宙航空研究開発機構)では、JAXA-JERG-2-200「電気設計標準」やJERG-2-212「ワイヤディレーティング設計標準」といった規格があり厳しく規定されています。 なお、基準は、NASA(アメリカ航空宇宙局)など他国の宇宙機関の標準とも整合性があります。
どういったディレーティングがどのくらいの効果として得られるか、ノウハウに頼るところもあり、技術者の腕の見せどころといった面もあります。
イメージ的には、陸上100mを10秒(=時速約36km)で走る選手は、ゴール時にはほぼ体力的には限界ですが、スピードを落とせば、200mでも400mでも走ることができるようになります。 また、短距離選手と長距離選手とはもともと異なりますが、マラソンのように、42.195kmもの距離も走れます。 この時の時速は約21kmと、100m走の時の半分程度の速度になっています。 ‘‘50%のディレーティング?’’で、約400倍もの距離に伸びたことになります。 パワーを抑えればその分長く持続できる例としたつもりですが、少し無理があったでしょうか、、、、、
【接触抵抗が変化することの一因について】
仮にスイッチの接点形状が、直径2mmの円板状のものどうしでON-OFFを行うとき、その面積は、半径x半径x3.14 (mm2)で求められると誰しもが学校で習ったと思いますが、【接点】として考えたときは、通常そうはなりません。
普通に考える接触面積がそうであっても、接点は面と面での接触ではないからなのです。 目視では面と面で当たっているように見えても、実際の接触はごく小さな【点の集合】【接触点】でしかなく、その合計は計算結果の3.14 (mm2)よりも遥かに小さな面積になっているのです。 円板の表面をミクロ的に見ると、そこは平面ではなくまるで月の表面のような状態になっているというか、円板の表面に、砂粒を吹き付けた状態にも似たことになっています。 その円板を向かい合わせて密着?させても面と面での接触は期待できず、ほとんど凸部の先端しか接触しないことになります。 接触点は少なくとも一個はありますが、通常は複数個存在します。 円板の面と面が平行でなければさらに複雑になります。 そしてそこに接触抵抗が発生します。
そのような状態なので、一度オープンして次にクローズした時には接触の状態は、接触の箇所(部分)がまるっきり異なっていたり、その数も違っているということが普通です、、、、ということですので、接触抵抗はON-OFFのたびに変化しやすいのです。
プラスα:微少電圧・微少電流でのON-OFFの場合は、電流の入り切りでアークが発生しずらく、接点の劣化も少ないため、接点をなるべく小さくして、「接触点」の数を限定させ、いわゆる面積よりも接触点に接触圧力を集中させる形がとられることもあります。 接触圧力とは、ここでは単位面積当たりの圧力のことを言います。 もともと微少電流なので、接点の面積はあまり必要がなく、限られたスプリングなどの力を小さい面積のところに集中的にかけることで、接触圧力を上げています。
→ 市販品の一つの例として、蒲鉾のような形をした接点を持ち、面ではなく山形になった側どうしを90度の角度で十字形に合わせて、接触点を極端に絞ったスイッチやリレーがあり、その名も「クロスバー」接点といったものがあります。 ひとつの接触点当たりの接触圧力を極力上げて、より良い接触状態を作り出し、接触信頼性のアップに重きを置いている設計となっています。
今回もお読みくださいましてありがとうございました。
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